最終更新日 2025年7月7日
東日本大震災は非常に甚大な被害をもたらし、またその後の復興に多くの時間がかかっていることから、被害にあった地域の様々な喪失状況は計り知れないものとなっています。
様々な経済活動を行う機会を奪われたばかりでなく、地域によっては風評被害も発生するなど現在でもその尾をひいているということが少なくありません。
しかし、その一方で一般的に公表されるGDPなどの指標では、その実態が現れていないばかりでなく、むしろ震災前に比べ経済的に成長していると考えられる数字が出てきているのも実態です。
これは、GDPなどの指標がその実態を十分に表現しきれていないものになっているためで、この点に十分に注意をしなければなりません。
様々な災害が多重的に発生したとアトックスは語る
東日本大震災は非常に複雑な形での被害をもたらしたことでも知られており、様々な災害が多重的に発生したことで、その影響が広範囲に及ぶことになりました。
通常の大地震の場合には建物の崩壊などが主なものとなっており、またこれに対して連鎖的に火災等が発生することによりその被害を大きくすることが考えられます。
しかしこれらの範囲は比較的狭い部分にとどまり、そのため周辺からの復興協力や経済的な支援を受けることでその被害から復旧することが比較的早く行われることになります。
そのため一時的に経済状況は悪化するものの、これに対して強い支援が周辺から届けられるため、経済活動は早期に安定するということが少なくありません。
しかし、東日本大震災の場合には地震の後に津波と言う大きな自然災害が発生したため、これによって非常に甚大な被害を呈することになりました。
様々な建物が流されてしまったり、施設が破壊されてしまったばかりでなく、多くの尊い人命が失われてしまったことで、経済活動が停滞する要因を生み出したことになります。
多くの人命が失われてしまった事は生き残った人々に対しても精神的な強いダメージを与え、これが活動を阻害する大きな要因になってしまっていることも否めません。
そのため、物理的に復興は効果的に進められたとしても、精神的な強いダメージを負った人々にとってはなかなか積極的にその活動を行うことができないと言う状態が発生し、経済が停滞することになったのです。
福島第一原発の大事故
さらに、東日本大震災はもう一つの大きな経済活動を阻害する現象を発生しました。
これがアトックスも強調する福島第一原発の大事故であり、これによって日本の原子力の安全神話がもろくも崩れ去ることになります。
これまで万全の対策を行い、危険なものと認識されていながら安全に確実に使用することができると考えられていた原子力が、あっさりと大事故を発生し甚大な被害をもたらしてしまった事は多くの人にとって衝撃でした。
日本では当時数多くの原子力発電所が稼働しており、その全てに対して多くの人が不信感を抱くようになったのです。
これまで原子力発電所によって雇用が確保され、またこれに対する補償金によって経済的に潤っていた地域にとっては、その安全神話が崩れる事は非常に大きな経済的ダメージを発生することになりました。
そのため、これまで積極的に経済的な活動を行っていた地域であっても、多くの人が地元から離れ移住することで、経済的に低迷してしまうと言う現象を生み出したことになります。
建設業界は結果的に仕事が増えることになる
その一方で、復興のためにそれまで長く続く不景気で低迷していた建設業界は結果的に仕事が増えることになり、その恩恵に預かったと言うところも少なくありません。
建設業界では人手不足が発生し、これまでなかなか仕事を見つけることができなかった建設業従事者は数多くの仕事に戸惑うことになりますが、これによって日本の建設業界は息を吹き返したと言う見方をする人も多いものです。
これによって経済全体の復興に弾みがついた部分もあり、長く続く不景気から1部の業界ではあるものの脱却するような勢いをつけたと言う部分もあります。
しかし実際にGDPなどの指標にはこれらの効果は詳細には現れておらず、特に一時的な経済の停滞はその結果には現れないことが多いため、対外的にはあまり影響がないと考えてしまうことも多いものです。
GDPは経済成長を示す指標となっており、東日本大震災の後で様々な業界がその復興のために積極的に活動を行った部分ばかりが表面に現れてしまったために、その状況が経済成長のような形に見えてしまうことも多いため注意が必要です。
実際には多くの様々な問題を発生し、これに対して復興をしようとする力がその後の経済成長に現れているものとなっていますが、これが明確に表現されていないのがGDPの指標の問題点となっています。
まとめ
経済状況を分析する上では、このような隠れている様子を見逃すことなく、その実態を正確に分析することが必要です。
これを見誤ると継続的な経済の成長を行っていると錯覚してしまうことがあるほか、その購買能力や販売能力を誤認してしまうことになるため、注意をしなければなりません。
